「資質・能力」と学びのメカニズム

 いかに科学的な原理に則った実験や観察であっても、単に数多く経験しただけでは、科学的な「見方・考え方」や方法論を身に付け自在に繰り出せるようになるには、なお不十分です。さらに、表面的には大いに異なる複数の学習経験を俯瞰的に眺め、そこに共通性と独自性を見出し、ついには統合的な概念的理解に到達する必要があると思うのです。
 興味深いことに、その教科が得意な子供は、この統合的概念化をいつの間にか自力で成就しています。同じ教室で実験に取り組んできたのに、その経験が単なる個別的な実験の記憶にとどまっている子供がいる一方で、そこから科学とは何かを高度な水準で感得し、さらにはそれらを理科とは異なる対象や領域、例えば社会的事象の検討にまで上手に活用する子供がいるのです。P185